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川井田 俊(カワイダ シュン) KAWAIDA Shun |
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エスチュアリー研究センター 助教
エスチュアリー研究センター
0852-32-6439
ライフサイエンス / 生態学、環境学
ライフサイエンス / 水圏生産科学
生態,生物生産,食物連鎖,底生動物,甲殻類,干潟,塩性湿地,マングローブ域
宍道湖のヨシ原におけるヤマトシジミ稚貝の個体群動態
宍道湖において,ヤマトシジミは代表的な底生生物であり重要な水産資源である。ヤマトシジミ資源を安定的かつ持続的に利用していくためには,それらの個体群動態,特に初期生態を明らかにすることが不可欠である。
夏季に放出されたヤマトシジミの卵は,孵化後一定の浮遊幼生期間を経たのち,着底稚貝となる。宍道湖では,そのようなシジミ稚貝が水深数mの砂底域に分布することが報告されている。その一方で,水深が浅く,抽水植物のヨシが生育する湿地(ヨシ原)が稚貝の生息場として重要である可能性が指摘されている。ヨシ原には,植生域や植生のない裸地といった微細生息場所が隣接して存在することが多い。このようなヨシ原の微細生息場所間における物理環境の違いは,稚貝の分布や現存量に影響をおよぼしているかもしれない。しかし,シジミ稚貝がヨシ原の微細生息場所をどのように利用しているのかということについては,まだほとんどわかっていない。
そこで本研究では,宍道湖のヨシ原に存在する微細生息場所において,ヤマトシジミ稚貝の定量採集を行い,ヨシ原の微細生息場所間での個体群構造(個体数,現存量)の違いを明らかにすることを目的とする。
研究分野:生態・環境
(国内共同研究) 2019年 ~ 2019年
多様な底生動物を支える塩性湿地の機能の解明:野外実験的アプローチ
塩性湿地には多くの底生動物(以下,ベントス)が生息し,様々な生態系機能を有する重要な場所であると言われている。しかし,塩性湿地がベントスの生息場(たとえば餌場や隠れ家,避難場)としてどのように機能しているのかということを直接的に検証した例はまだまったくないのが現状である。そこで本研究では,三重県の塩性湿地において,ベントスを対象とした多角的な野外実験(摂餌実験・構造物実験・捕食圧実験)を行うことによって,ベントスの生息場としての塩性湿地の機能を総合的に評価する。
研究分野:生態・環境
(個人研究) 2019年 ~ 2021年
塩性湿地の生物生産に対する難分解性多糖類の貢献度評価:実験的手法による再検討
耐塩生植物が生育する塩性湿地は陸と海の生態系をつなぐ連結点であり,そこに棲む多様な底生動物(ベントス)によって高い生物生産性が維持されることで,多くの生態系サービスが提供されている。しかし,塩性湿地の主要な有機物源である高等植物由来のセルロースを主成分とする多糖類(以下,難分解性多糖類)が,ベントスの餌資源やその後の高次生産にどの程度寄与しているのかについては直接的な検証がされておらず,塩性湿地の生物生産構造の実態はまだほとんどわかっていないのが現状である。そこで本研究では,塩性湿地の代表的なベントスであるカニ類を対象に,難分解性多糖類の利用能の高い種を特定するとともに,それらの成育(二次生産)に対する難分解性多糖類の寄与率を室内飼育実験により検証する。また,難分解性多糖類を同化するカニ類の高次生産への貢献度を明らかにするために,魚類の食性解析を行う。これらの実験的アプローチを主体とした研究により,塩性湿地の生物生産に対する難分解性多糖類の重要性を再評価する。本研究を遂行し,塩生植物に由来する難分解性多糖類が塩性湿地の生物生産に大きく貢献していることを数値的に実証することができれば,世界的に劣化の進む塩性湿地の生態系保全の必要性を裏付ける定量的な知見を提供することが可能である。
() 2023年 ~ 2026年
セルロース分解能をもつカニ類によって発揮されるブルーカーボン生態系機能の定量評価
異常気象や生態系の劣化を引き起こす地球温暖化は,主に人間活動によって排出された大量の二酸化炭素が原因である。そのため,二酸化炭素の吸収源となる生態系の保全は世界的な急務となっている。このような中近年,陸上の森林のみならず,大型の種子植物が繁茂するマングローブ林や海草藻場,塩性湿地などの沿岸植生域が重要な二酸化炭素吸収源であることがわかってきた。このように,二酸化炭素の除去機能をもつ沿岸植生域は「ブルーカーボン生態系」と呼ばれ国際的な注目を集めている。ブルーカーボン生態系については,これまでそこに棲む植物の炭素吸収量を調べる研究が進められてきた。しかし,それらの植物によって取り込まれた炭素がその後の食物連鎖でどのような生物にどの程度利用・同化されているのかを定量化した事例はまだほとんどない。
このような状況に対して,本研究では,温帯域を代表するブルーカーボン生態系である塩性湿地とそこに優占する底生生物(ベントス)を対象に,塩生植物の主要な有機炭素成分であるセルロースを分解する酵素をもつカニ類に着目し,塩生植物由来の炭素の同化量を定量的に明らかにする。本研究の成果は,地球温暖化抑制に大きく貢献するブルーカーボン生態系である塩性湿地において,ベントスが担う炭素同化機能を数値的に示すことで,塩性湿地を対象とした保護区の設定や開発案件における保全上の配慮を促すためのエビデンスとなることが期待される。
(国内共同研究) 2023年 ~ 2024年
多角的な食性解析からひも解くサワガニの餌利用パターン
() 2020年 ~
助教2018年~
三重大学 修士 (生物資源研究科 ) 2013年 (修了)
東京大学 博士 (農学研究科 生圏システム学専攻) 2018年 (修了)
博士(農学) (課程) 東京大学